2018.07.18
一般的に屋根の修理工事には3種類あります。
10年以上経つと、色が剥げていたり、サビが付いていたりで、見た目も悪いし綺麗にしたくなったら、現状雨漏りなど問題なくても瓦などに塗装をしてもらうことで見た目を新しくすることはできます。
また塗装することで、瓦の保護にもなり、またより瓦の強度は上げることができます。
しかし、雨漏りや、屋根がゆがんだり割れたりしていたら、屋根の交換工事などをしないといけません。その工事が屋根の葺き替え工事か、カバー工法という手法になります。
名前は聞いたことがあるけど、葺き替え工事もカバー工事も具体的になにをするのかよくわかりませんよね。
屋根の葺き替え工事、カバー工法はなんなのか、どちらもメリットデメリットがありますから分かり易く、ご紹介したいと思います。
屋根の葺き替えとは、簡単にいいますと、屋根の下地から屋根の素材まで全てを新しく取り替える工事です。
下地である野地板や防水シートも取り換え、新しい瓦を敷き詰めます。昔からある、屋根瓦は、とても耐久性が強く、屋根材としてダントツに優れていますが、瓦はとても重く、また屋根瓦を敷くと重心が高くなり、風や地震などでの揺れに弱く、建物の耐震に影響を与えます。
また、今、屋根の葺き替え工事をするなら、昔の瓦ではなく、スレート瓦や、金属製瓦への葺き替えが主流となります。
現在の新築の建物の大半は、こういったスレートや金属瓦が軽量で、価格も安いので葺き替え工事でも、こちらに変更する方が多くなっています。
カバー工法とは、簡単に言いますと現状ある屋根瓦に新しい屋根瓦を上から重ね張りをする屋根工事になります。昔の分厚く、波が打っているような瓦にはできません。
スレート瓦や、金属の平らな屋根にのみ、することができる工法です。
葺き替えと異なり、現状の屋根を撤去したり、処分したりの手間が省ける分、工期の短縮や工賃も安く済むと一般的には言われています。
さて屋根の葺き替え工事、カバー工法の概要はお分かり頂けたかと思います。
しかし、このままではどちらがいいか選択できませんよね。
これから葺き替え工事、カバー工法のメリットデメリットを解説します。
出典 ニチハ株式会社のホームページより
https://www.nichiha.co.jp/loof/centerloof/point05_02.html
屋根面積100㎡の住宅で、瓦からガルバリウム鋼板の瓦へ葺き替えた場合
既存屋根材の撤去費用 | 約30万円ほど |
---|---|
既存屋根材の撤去費用 | 約30万円ほど |
下地の補修 | 約15万円ほど |
防水シート | 約5万円ほど |
新しい屋根材 | 約60万円ほど |
その他の工事 | 約5万円ほど |
足場代 | 約15万円ほど |
※相場であって、各業者によって金額は大きく変わることがあります。
メリットは、なんといっても、屋根材だけでなく、下地から綺麗に新しく取り替えるので屋根としての機能が新しくなります。
屋根が新しく、機能として強くなると、雨や風から建物を守ってくれる力もアップするので、建物の寿命も伸ばすことにつながります。
気付いてないだけで、屋根の下は傷んでいたり、雨水が侵入して柱や梁が、知らない間に腐敗してしまっていることがあります。
屋根のメンテナンスを30年以上もしていないようだったら、屋根の葺き替え工事をするほうが安心かもしれません。
また、屋根を新しくすることで、見た目が生まれ変わります。
屋根は、太陽の光や、雨、風に一番さらされるので見た目の劣化も激しいものです。
屋根を変えるだけで建物全体の外観が美しく変わるのは言うまでもないこと。
費用は結構高額になりますが、お金をかけてみる価値はあるかもしれません。
また、新たに葺き替えとなると、今流通している、軽量の瓦への葺き替えになるかと思います。
現状が昔ながらの瓦から新しい屋根材に替えたら、なんといっても建物の耐震性は上がりますし、地震が起きた時の瓦が散って近隣に被害を及ぼしたりするリスクもなくなります。
地震大国である日本ですが、近年どんどん予想を超える地震や風災が増えています。
そういった面でも、新しい軽量の屋根瓦へ葺き替えるのはメリットが高いと言えます。
しかし、こういった良いことづくめに思える葺き替え工事にももちろんデメリットはあります。
最大のデメリットは、工事費用がダントツに高額になります。
古来の屋根瓦の下地には、アスベスト(発がん性があり、現在は使用、製造禁止されている)が含まれています。
そちらを撤去するには、そもそも足場が必要ですが、アスベストが近隣に飛び散らないよう、養生もしっかりしないといけませんし、特別な処分費用もかかります。
新しい屋根材や、下地の費用だけでなく、足場材、養生費、撤去費、処分費、また葺き替えとなると工事期間中の雨漏りの心配もありますので、工期はなるべく短いに越したことはありません。
となると余計に人件費もかかってくるので屋根の修理工事のなかではダントツの高い費用がかかります。
しかし、葺き替え工事は、一度行うと、近年では10年、20年、いや30年以上もメンテナンス無しで利用できることも立証されてきています。
トータルのコスト面を考えると、特別高いものではないかもしれません。
出典 ニチハ株式会社のホームページより
https://www.nichiha.co.jp/loof/centerloof/point05_02.html
屋根面積100㎡の、足場が必要な工事の場合
下地 | 約18万円ほど |
---|---|
防水シート | 約5万円ほど |
新しい屋根材 | 約60万円ほど |
足場 | 約10万円ほど |
諸経費 | 約5万円ほど |
※工事費用は業者によって異なります。
平屋などの場合は足場が不要な場合もありますので、そういった場合はさらにお安くなります。
カバー工法の最大のメリットは、なにより現状の屋根と下地を剥す手間が無い事です。
それにより、葺き替え工事で最大のデメリットだった工事費用がうんと安価になります。
下地などを剥す作業が無いので、もちろん撤去費や処分費もかかりませんが、上から重ね張りするだけで工事が済むので、人件費も削減、工期も早ければ、30坪くらいのお家の屋根だと全面貼り付けても1日で終わることもあります。(足場を組む作業、撤去作業を入れると最短でも2日はかかります。)工賃が安く、費用もより安価に屋根を新しくできるならそれに越したことはないように思います。
しかし、カバー工法にもデメリットはあります。
カバー工法の最大のデメリットは、アスベストを残したまま下地や屋根材を取り替えることなく、新しい屋根材を張り付けてしまうことです。
その分費用や工賃はとても安く済むのですが、カバー工法で使われるガリバリウム鋼板製のものは10年で剥がれなどにより、雨漏りなどをし始める可能性があり、再度短い期間で修理工事になる可能性があります。
そうなりますと、再びその上に重ね貼りをすることはもうできません。
一度カバー工法を施した屋根材の上に、さらにカバー工法による屋根材を張り付けることができないので、今度の修理工事は、葺き替えになります。そうなんです。
結局葺き替えの工事になるのです。
でもそれでも、10年以上は、カバー工法だけで済むならやはり、カバー工法もメリットが高いのではないかとも思います。
しかしそこにもやはりリスクがあり、近年アスベストの廃棄処分の費用も右肩上がりで上がり続けています。
現時点で、10年前の約5倍以上になっています。
これから10年経ちますと、さらに何倍になっているかは分かりません。
となると10年後の将来の、葺き替え工事は、屋根材の費用は変わらなくても何倍にも工事費用が上がっている可能性があります。
また、一度カバー工法を施した屋根に葺き替え工事を行うとなると、屋根材を剥して、下地をも取り替える作業で、余計にアスベストが飛散する可能性があります。
これは、近隣のかたや、ご家族の方、また施工者もアスベストによる被ばくとなるためより一層慎重な工事となり、当然のことながら費用も高くなり、被ばくというリスクが大きくなってきます。
またアスベストとは別の懸念もあります。カバー工法を行う際は、野地合板などの下地の劣化状況も見ることなく、屋根を新しい屋根材で覆てしまいます。
もし、野地合板などに、腐敗があったりすると、屋根材を留めているビスの保持力は弱くなるので、台風や地震などで、予想外の被害が発生するリスクもあります。
もちろんこれは、野地鋼板が痛んでいたらの話ですが、しかし、築年数が30年以上経過しているお家でしたら、カバー工法を選択する際には、一度しっかりと屋根の下地の状況も確認して判断する必要があります。
住宅ローンも残っている中、数百万円もかかるメンテナンス工事を決断するのはとても勇気が要ります。
少々もってくれるなら、今はとりあえず安価なもので済ませたい気持ちにもなります。
しかし、長い目で見ると、30年以内に何十万、何百万とかかるメンテナンス費用を何度も捻出することを考えるなら、思い切って、一度葺き替え工事を行い、あとは安価なメンテナンスで済むように計画を立てて工事を行う方が賢明かもしれません。
屋根の修理工事も色々あって一長一短です。
ご自分たちのライフプランに合わせて、どういったメンテナンスがいいか長期の計画を立てて考えてみて下さい。
屋根は建物を飛来物や雨、直射日光から守る大切な役目を持っています。そんな大事な屋根の寿命を少しでも伸ばすのは日々のメンテナンスであることは言うまでもありません。
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