2018.07.18
屋根は建物を飛来物や雨、直射日光から守る大切な役目を持っています。
そんな大事な屋根の寿命を少しでも伸ばすのは日々のメンテナンスであることは言うまでもありません。
しかし普段、自分の目で屋根の状態を確かめられないため、何か異常が起きた時気付きにくいという側面も持っています。
屋根は”屋根”と一言で表しがちですがいくつもの部材に別れています。
今回は屋根の各部材、材料を解説いたします。屋根の材料を知ることで少しでも屋根に対する関心を持っていただければと思います。
屋根の一番外側の材料は瓦やスレートですが、それらを工事することを”葺く”と言います。
茅葺き屋根(かやぶきやね)などと聞いたことあるように、瓦の場合は瓦葺きと言います。
屋根葺き材は衝突などに対する耐久性、火災時などの耐火性、雨水や雪に対する耐水性、日光の褪せに対する耐候性が必要とされます。屋根葺き材にもたくさんの種類が性能や値段帯によって異なりますのでご紹介します。
瓦は日本では古くから使われてきた屋根葺き材料で粘土を材料とし釉薬などと共に焼成されたものです。
現在でも広く使用されており屋根材料の全体の40%を占めているとも言われております。
材料としては高価ですが塗り替えが要らなかったりと耐久性が高く、メンテナンス費を考えると得な材料とも言えます。日本では三洲瓦が有名で現在でも多く製造されています。
スレートとは薄物屋根材、コロニアル、カラーベストとも呼ばれる材料です。
スレートはセメントと繊維質からできており瓦と並んで広く普及しています。
瓦よりも安価で模様や着色が容易な分、多くのデザインがあります。
瓦よりも耐久性等は落ちますが近年、性能が上がり耐用年数は30年に達すると謳われております。
安価なため初期費用を抑えたい要望に応えられ、多くの住宅に採用されております。
ガルバニウム鋼板は建築材料で板金と呼ばれる、住宅の外部の様々な箇所にも使われております。
アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板で作られており、金属屋根と呼ばれるものはガルバニウムがほとんどです。
すっきりとしたデザインのため、外壁材と共に建築家が好む傾向にあります。
軽量で地震時に強いことや耐久性も高いですが、工費が高いのと防水性がまだ改善の余地がある材料です。
シート防水とは通常の屋根とは異なり、平らな屋根である陸屋根で用いられる施工方法です。
陸屋根である分、防水機能は勾配屋根よりも劣りますが近年開発が進み、日々性能は進歩しています。
木質の下地にゴム質の塩化ビニル樹脂系のルーフィングを施工しわずかな勾配を設けて排水経路を確保します。
陸屋根はデザインなどの観点から需要が高まっておりますが、その分雨漏りなどの事例も多く、非常に神経質な工事が要求されます。
近年、電力消費軽減の観点から多くの新築住宅が太陽光発電を搭載しています。
屋根葺き材の上からパネルを据え置くタイプが主流ですが、美観上の観点から瓦程度の大きさのモジュールの発電パネルを屋根葺き材の代わりに設置するタイプも増えてきました。
屋根葺き材の上から据え置くタイプはいわゆる太陽光パネルと言う外観で、外からもわかりやすいですが、瓦一体型太陽光パネルはわかりません。
スマートに電力も発電したい要望に応えられる製品です。
棟は屋根と屋根がぶつかって、直線になっているところを指します。
棟にはいくつか種類がありますが屋根と屋根の接合してる場所であるがために、水の侵入を許しやすい箇所となっています。
工事もその分慎重に行われますが、それでも大雨や大雪、衝撃や経年劣化などで少しづつダメージが大きくなり、被害がでがちな部位でもあります。
整形な建物の切り妻屋根は棟が一つしかありませんが、寄棟などの屋根や整形でない建物の切り妻屋根はいくつかの棟があります。
その中で最も高い位置にあるのが大棟です。
建物の中でも一番高い位置にあることから象徴的であり、社寺建築などではとりわけ装飾が施されます。
大棟が一直線に綺麗に長く取られている屋根は稜線が美しく設計者の腕も良いとされます。
隅棟は寄棟屋根の山部分で、大棟に登る棟を表します。
斜めの部分であるため大棟よりも工事は難しく慎重になります。
斜めなので水の流れが生じる分、施工不良の際は水も溜まりやすく雨漏りの原因になるところです。
隅棟が真っ直ぐ施工されていると寄棟屋根のシルエットがとても綺麗、職人技の見せ所とも言えます。
社寺建築では真っ直ぐでなく”反り”といって若干反り返っているラインを作るのが特徴、図面で表すのが難しくまさに職人芸。
整形でない寄棟などに生じる谷部の棟。一番厄介のはこの谷棟で、谷型の形状から水が溜まりやすいです。
水が表面を流れる分には防水材料は問題ないですが長い間の時間、表面に水溜りのように滞留してしまうのは良くないため、雨漏りの原因になりやすい箇所です。
谷棟を出さない屋根の計画が一番良く、設計者の技の見せ所ですが、敷地や間取りの関係からそうもいかないのが現実です。
棟は耐久性、防水性、耐火性が必要です。
棟の材料は大きく分けて2種類。1つは古くから使われている瓦と同じ材料。
瓦は粘土に釉薬を混ぜて焼成しますが、その際に棟に合う形に整形します。瓦と同じ性能であるため、優れた性能であり基本メンテナンスフリー。
もう1つは外装部材でおなじみのガルバニウム鋼板です。
耐衝撃性や耐候性などは瓦に劣りますが流通量の多さや施工性の良さから価格が瓦よりも安価。
台風や大雪の後は被害あでやすく、10年ごとに定期的なメンテナンスをした方がベターです。
雨押さえは屋根と壁がぶつかっているところを指します。
2階建ての1階部分などにかかる屋根を下屋と呼びます、下屋と壁あたり部分の接続をし、接続部の雨水侵入を防ぐ部材を雨押さえと言います。
防水の弱点となる異なる部材同士(下屋、外壁)の接続部の防水が役割です。
建築はどこでもそうですが異なる素材同士の接続部分は必ず弱点になります。
第三者的な部材がそれを補うことで補完します。
補完してても弱点であることは変わらず不測の事態は接続部分から起きることが多い。
ガルバニウム鋼板やステンレスが主流。ガルバニウム鋼板は流通量が多いため安価。
ステンレスは若干効果ではありますがサビに強く性能が高いです。
なお多くの屋根勾配や色にも対応しており種類が豊富なのはガルバニウム鋼板。
屋根を下から見上げた時に見える面を軒天と呼びます。
軒は屋根が建物本体から飛び出ている部分を言いますが、軒天は軒の下側を押さえる部材です。
下から見たときは屋根は見えず軒天が見えるので最近は軒天のデザインの種類も増えてきました。
軒の内部は軒を構成する垂木や小屋梁がありますがこれらは炎や水に弱いです。
内部の構成部材を守るために炎や水に強い軒天を施工します。
軒天は外壁と同じような役割な為、外壁で多く使用されている窯業サイディングを使用することが多いです。
窯業サイディングは模様やデザインのバリエーションが豊富な為、デザイン性の高い木目調の軒天サイディングなど増えてきております。
ケラバは切り妻屋根の妻側(軒ではない側)に飛び出ている部分を指します。
屋根は軒やケラバが深い方が陰影がはっきりとし迫力があります。
しかし深すぎると高さ制限や建ぺい率などの法規制にかかりやすいため、条件と照らし合わせ都合が良い深さに落ち着きます。
ケラバを深く出すことは見た目にも重要ですが、日差しを遮るのにも一役買います。
建物に直射日光が当たらない為、温度上昇を抑えられます。
また建物と屋根の接続部分に雨が吹き込むのを防ぐ役割もあります。
近年採用が多い太陽光発電もケラバが少しでも飛び出ていると屋根面積を増やせ、搭載量増加に繋げられます。
樋は屋根に降った雨を集めて適切に排水に導く部材です。
普段地味で気付きにくいですが雨が多い日本の気候では大事な役目を持っています。
メンテナンスをを前提に作られているため交換が容易な作りです。
その為衝撃などに弱く大雪や強風で壊れることがあります。
気づいてメンテナンスすれば良いですが、気づかず放っておくと雨漏りに繋がることもあります。
屋根周りに張り巡らされているのが軒樋。水下で雨水を集める働きをします。
ここに落ち葉などが溜まってしまうと詰まってしまいます。
また軒樋は雨水が流れていく為、若干の傾斜がついています。
この傾斜が乱れてしまうと逆流や滞留など、適切な排水を導けなくなります。
このように軒樋はとても地味ですが、繊細であり大切な役目を担っています。
軒樋で集めた雨水を建物に沿って排水すべき場所に導く役目です。
縦樋の先からそのまま雨水が出っぱなしになる場合もあれば、雨水マスに繋がっている場合もあります。
これは行政の指示に従うことになるでしょう。
縦樋は外側から目立つ為、家の正面に配置するととても邪魔です。
優れた設計士は目立たない建物の裏などに配慮するものです。
樋に求められる性能は加工の容易性、水密性です。
多い素材は塩化ビニル製、ガルバニウム 鋼板、アルミ製などです。
最も流通量が多く安価なのは塩化ビニル製ですがアルミ製などは高価な分、錆に強いです。
屋根の周辺部材の解説いかがでしたでしょうか。
普段気にすることのない屋根ですがこうして見ると多くの部材が協力して建物を守っており、1つ1つの部材がちゃんと役割を持っているのがわかります。
どれか1つが欠けると他の部材に皺寄せがいき、結果大きなダメージを受けてしまいます。
屋根にとって嫌な強風や大雪のあとなど少しでも気にして見ると建物の長寿命化に繋がります。
明日から少し気にかけて見てみると建物の寿命が伸びることに繋がるでしょう。
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