2019.11.22
戦後から現在もなお多くの屋根で使われている「瓦棒葺き(かわらぼうぶき)」という工法をご存知でしょうか?
屋根と一口に言っても、瓦やスレート、トタンなどその種類は様々です。
また時代と共に施工方法や建材も進歩し、これまで使われてきた工法がなくなることも珍しくありません。
瓦棒葺き屋根はまだ多くの建物で使用されているものの、減少している工法のひとつです。
ではなぜ減少傾向にあるのでしょうか?
またこれからリフォームする場合に他の屋根材へ変更することはできるのでしょうか?
今回は瓦棒葺き屋根の特徴からメリット・デメリット、修繕方法に至るまでをまとめました。
これから屋根のリフォームや新築を検討している人もぜひ参考にしてください。
出典:http://www.sankometal.co.jp/products/metalroof/vertical-batten/batten003.html
メリットやデメリットの解説に入る前にまず、瓦棒葺き屋根がどのような形態の屋根であるかを把握しておきましょう。
瓦棒葺き屋根は、かんたんに説明すると「トタン屋根」のことです。
「瓦」という文字があるものの瓦は使用しません。
使用されるメインの屋根材はトタンをはじめとした金属性の板であり、それを屋根の頂点から軒先へ縦に並べた棒(瓦棒と呼ばれるもの)に取り付けていく工法です。
この工法の強みは雨漏りに強く、傾斜が緩やかな勾配(こうばい)でも設置できること。
メイン材料に金属板を使用することで隙間を減らし、水はけが良いのが特徴です。
また施工方法が簡単で費用面も安く抑えることができるため、1950年代に開発されて以来、広大な施設の屋根から住宅に至るまで様々なシーンで現在も使用されている工法です。
主な使用金属にはトタンの他に、ガルバリウム鋼板という金属板が使用されます。
出典:https://catalog.mitsuboshi-shoji.co.jp/catalog/586
トタンは鉄板の周りを亜鉛でメッキ塗装した金属板です。
大正時代から使用されていた建材のひとつであり、トタンと聞くと上記のような波状の板を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
現在も工場の壁などで使われているのをよく見かけますね。
出典:https://catalog.mitsuboshi-shoji.co.jp/catalog/1444
ガルバリウム鋼板は鉄板に「亜鉛・アルミ・シリコン」のメッキを施した金属板です。
見ためはトタンと見分けが付かないほど似ていますが、耐久性ははるかにガルバリウム鋼板が上回っています。
さらに価格の差もほとんどないことから、現在ではトタンに代わってガルバリウム鋼板が使用されることが多いです。
戦後から現在も多くの建物で採用されている瓦棒葺き屋根。
そのメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
瓦棒葺き屋根の重量は瓦屋根の1/10ほど。屋根材が軽いため建物への負担を軽減できます。
一枚一枚の金属板が長尺であるため瓦のように崩れる危険性が低く、軽い素材であることから地震時にも建物に大きな負担がかかりません。
継ぎ目がないため、一寸勾配(いっすんこうばい)という緩やかな傾斜でも水が流れやすくなっています。
したがって滞留が起こりにくく雨漏りがしにくい構造です。
まず材料費が安く、施工方法も比較的単純であることから短い工期で施工ができます。
工期が短ければそれだけ施工費も抑えることができるので、費用を抑えた施工が可能です。
金属であるため熱を通しやすく断熱性が低いです。
夏場は暑さを、冬場は寒さをそのままダイレクトに反映してしまいます。
したがって断熱材の施工が必須といえるでしょう。
外の音が通りやすく、雨が屋根を打ちつけると雨音が室内に響き渡るほど大きな音となることがあります。
古い体育館などでは金属板の屋根が使われていることが多いため、耳にしたことのある人もいるのではないでしょうか。
塗装が劣化したり傷がついて剥がれたりすると、サビが発生します。
発生してしまうと広がるスピードも早く、サビたことに気づかないまま放置していると穴が空き、雨漏れの原因に。
瓦棒葺きはトタンを芯木に釘で打って固定していきますので、その芯木がダメになってしまうと強度が保てません。
経年や軒先からの水の吸い上げで腐食すると釘の部分が弱くなり、強風で外れてしまう危険性があります。
戦後から多くの建物で利用されてきた瓦棒葺き屋根が、現在では減少傾向にあるようです。
減少の理由は新しい工法の台頭にあります。
これまでの工法では芯木が腐食すると機能しなくなるという弱点がありました。
しかしその弱点を克服する工法が開発されたのです。
それが立平葺き(たてひらぶき)という工法で、芯木を必要としない工法であることが最大の特徴です。
現在の金属屋根の施工ではほとんどが立平葺きで、さらに使用される金属板もガルバリウム鋼板やスレートが主流となっています。
出典:https://www.pakutaso.com/20170615171post-12123.html
瓦棒葺き屋根の耐久年数を伸ばすには塗装が要(かなめ)。
経年劣化や傷などで塗装が劣化すると一気に屋根全体が劣化してしまいます。
ではメンテナンスが必要となる時期はいつごろでしょうか?
以下で詳しく解説していきます。
瓦棒葺き屋根は表面の塗装が色あせてきたらメンテナンスが必要です。
塗装の劣化が進み放置しておくと、鉄板部分にサビが発生し、雨漏りの原因となってしまいます。
手で触ると白い粉が付着する場合があります。
これを「チョーキング」といいます。
紫外線や雨・風といった自然環境が原因です。
このような状態では、塗膜が壊れ塗料がむき出しになっている状態です。
早めにメンテナンスをおこないましょう。
瓦棒葺き屋根のメンテナンス方法には以下の3通りがあります。
以下で詳しく紹介します。
出典:http://www.ac.nisshin.nipponsteel.com/yane/nami/index.htm
トタン屋根は定期的に塗装することで耐用年数を長くできるのが特徴のひとつです。
その効果は塗膜の劣化や剥がれを防ぐだけではなく、サビの早期発見や防止にもつながります。
穴が空いてしまうと塗装では対応ができないため、定期的な塗装による防止策が有効です。
つづいて、傷んだトタン屋根の上に新しいトタンやガルバリウム鋼板を上乗せする重ね葺き(カバー工法)です。
内容はとても単純で、古いトタンの上に新しいトタンやガルバリウム鋼板を敷きます。
屋根の状態に合わせて防水シートや遮音シートなどを挟み込むことができ、効果の上乗せも可能です。
屋根材もトタンではなくガルバリウム鋼板で施工することでさらなる効果アップを期待できます。
サビによる劣化が進行し穴が空いてしまったなど、劣化が激しい場合には葺き替えが必要となります。
トタン屋根で設計された建物は、その重量で構造が計算されていることが多いため屋根材を変えることができません。
したがって葺き替えの場合も使用する屋根材はトタンもしくはガルバリウム鋼板といった金属屋根となります。
現在ではトタンより性能が良いガルバリウム鋼板の価格が同じくらいになっているので、葺き替えの際にガルバリウム鋼板で施工する人がほとんどです。
屋根の構造にもよりますが、瓦棒葺き屋根から立平葺きに変更することもできます。
いかがでしたでしょうか。
瓦棒葺き工法は減少傾向にあるものの、一般住宅や大規模な施設でも多く使われている工法です。
もし屋根が瓦葺き工法である場合には、定期的なメンテナンスをすることで耐久年数を伸ばすことができます。
傷みや劣化が激しく修繕が必要な場合は、トタンからガルバリウム鋼板への変更や立平葺きへの変更も検討してみましょう。
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